東京高等裁判所 昭和34年(う)2237号 判決
被告人 崔慶煥 外一名
〔抄 録〕
当裁判所は職権を以て調査するに、原判決は、東京都品川区役所戸籍課備えつけの筆頭者藤本哲夫の戸籍原本中、藤本シズエ同恵蔵、同広行の各欄は判示第一の不実記載罪から生じたもの宮城県登米郡迫町役場備えつけの筆頭者太田正三の戸籍原本中太田隆一の欄は判示第二の不実記載罪から生じたものであつて何人の使用をも許さないものであるから刑法第十九条第一項第三号第二項の法意に則り、それぞれこれを没収すべきものとし主文においてその没収を言い渡しているが、公務員に対し虚偽の申し立をなし、権利義務に関する公正証書の原本に不実の記載をなさしめこれを公務所に備付けしめた場合において、右の記載は公務員がその権限に基き適法に作成したものであるからたとえその内容が当事者の虚偽の申立に因り事実に反する場合と雖も、偽造文書の類とは異り同文書の記載部分は当該公務所に属し、これを刑法第十九条第二項の犯人以外の者に属せざるもの又は何人の所有も許さないものということはできないから(昭和三年(れ)第一七七七号昭和四年一月三十一日大審院第二刑事部判決参照)原判決が刑法第十九条第一項第三号第二項の法意に則りこれを没収する旨言い渡したのは、法令の適用を誤つたものでその誤が判決に影響を及ぼすこと明らかであるから原判決は破棄を免れない。
(岩田 渡辺辰 司波)